19世紀末から20世紀初頭、欧米資本主義国家間の競争は熾烈化し、各国内においては労働運動が激化していった。そうした背景によりドイツ国内では当時最重要産業である製鉄・鉄加工工業において、賃金交渉、労働闘争に大きな影響を及ぼす賃金支払い方法の実態調査が行われた。本書はその報告書9巻のうち第6巻の翻訳である。著者であり後の大銀行家、オットー・ヤイデルスの幅広い賃金支払い方法概念と彼の収集癖ともいうべきものに助けられ、工場の日常生活や地域の特性に関わる事実などを盛り込み、一見無味乾燥と思えるような報告書が魅力あるものとして映る。
目次
第1部:大工業
第Ⅰ章:工業的基礎と賃金測定
第Ⅱ章:賃金設定
第Ⅲ章:賃金支払い方法の官僚制的側面─賃金の決算と支給
第Ⅳ章:大工業的賃金支払い方法と労働者
第Ⅴ章:時間給、請負給、割増給
第2部:非大工業的生産─マルク地方の銑鉄加工小工業、ベルク地方の鋼加工工業、国営企業
A:小工業
B:国営企業
訳 注/解題/共訳者あとがき