四万十川流域に生きた一人の女性への聞書によって、昭和前半期のこの地域の女性の暮らしとことばをつづる。「ぬしが難儀にゃ仕様ない」のことばには、日々の水汲みや山田の苦労、舅と姑に仕える嫁の避けられない現実を、わが子のために耐え抜く意地と底力が秘められていた。その過酷な暮らしを知ることは、グローバル化経済と都市型消費文化への問いかけ、女性の地位を学び知るきっかけとなろう。ことば(方言)の発音の違いなども丁寧に表した文章からは、地域の暮らし・民俗のことばの思いがけない広がりが伝わってくる
目次
第Ⅰ部 米子さん昔語り
第1章 難儀な目におうた
一:船乗りの難儀―八十八歳―
二:ムラの暮らし―八十九歳―
三:うちらの時―九十歳―
四:どんな目にもおうてきた―九十二歳―)
第2章 里の暮らしと嫁の苦労―九十三歳―
一:冬から春の日々―よとき(時世)がかわった
二:であと(出里)での暮らし
三:嫁は苦労した
四:であとのきょうだい―九十四歳―
五:年の功、年の功―九十六歳―
第3章 夢に見る―九十九歳
第Ⅱ部 人と自然とことばと暮らし